「風は出ているのに暑い」「同じ階で一部の部屋だけ冷えない」。ファンコイルユニット(FCU)の冷房不良は、本体だけでなく、冷水を送る系統や運転条件も含めて確認する必要があります。
最初から「冷水の流量不足」「モーター故障」と決めつけず、症状の範囲、風の状態、水の状態の順に情報を集めましょう。本記事は水式FCUの初期確認と報告のための整理であり、分解修理の手順書ではありません。
この記事で分かること
- FCUが部屋を冷やす仕組み
- 冷房不良を整理する順序と記録項目
- 温度差だけで故障を判断できない理由
- 専門業者への引継ぎと衛生管理上の注意点
FCUは「冷水」と「空気」の熱交換で冷やす
FCUはコイル(熱交換器)、送風機、フィルターなどで構成され、冷温水配管とドレン配管が接続されます。冷房時はコイル内の冷水が空気から熱を受け取り、ファンが冷やした空気を室内へ送ります。冷房に伴う結露水は、ドレンパンで受けて排出します。[1]
つまり、冷水が用意されていても空気が十分に通らなければ、部屋から熱を運び出せません。逆に風が出ていても、必要な冷水が届いていなければ冷房能力を発揮できません。この二つを分けて考えるのが確認の出発点です。
本記事の対象は水式FCUです。外観が似ていても、冷媒配管がつながるパッケージエアコンの室内機とは構成が異なります。機器台帳・銘板・系統図から対象設備を特定してください。
最初に危険な兆候がないか確認する
焦げ臭い、煙が出る、異常な音がするなどの場合は、原因調査より運転停止・連絡を優先します。電気部分に水が掛かっている場合も、濡れた機器やスイッチへ不用意に触れず、現場の緊急対応手順に従ってください。
三菱重工サーマルシステムズは、長期使用するFCUの電気部品の劣化による発煙・発火の可能性と、異臭・異常音などがあるときの停止を案内しています。[4]「まだ風が出るから使える」とは判断しないことが大切です。
以下の確認は、安全が確保され、担当者に認められた範囲で行います。内部点検・清掃は停止と電源遮断など、対象機器の説明書に従った安全措置が前提です。運転中の内部への接触、通電部の測定、配管の開放を初心者向けの確認作業に含めません。[2]
冷えないときの確認は、この順に進める
以下はメーカー資料の確認項目を基に、設備管理の初動用に整理した順序です。故障箇所を確定する診断基準ではありません。
1.「どこで・いつから」をそろえる
まず、不調が1台だけか、同じ系統の複数台かを確認します。部屋の場所だけで判断せず、系統図で共通する熱源・配管を確かめます。
| 症状の範囲 | 次に比較する情報 |
|---|---|
| 1台だけ冷えにくい | 対象機の設定・風の状態・個別の冷水供給と、正常な近隣機の記録 |
| 同一系統で複数台が不調 | 共通する熱源・ポンプの運転表示、供給温度、系統の警報 |
| 特定の時間帯だけ不調 | 起動時刻、利用人数、日射、扉の開閉、運転スケジュール |
「複数台だから熱源故障」とは限りません。共通設定や使用条件も候補です。発生時刻と範囲をそろえることが、調査先を絞る手掛かりになります。
2.運転条件と制御を確認する
運転・停止表示、設定温度、風量設定、集中管理による制限、冷房が可能な供給状態かを確認します。リモコン表示と中央監視表示が一致しているかも記録します。
制御方式によっては、水量や風量を変えて能力を調整します。例えばダイキンのFWMFには電動2方弁による比例制御の仕様があります。[3]このため、表示上の運転指令だけで、弁の実動作や必要な通水が成立しているとは判断しません。確認可能な状態表示を残し、必要に応じて保守担当へ引き継ぎます。
3.風がない・弱い場合は空気側を確認する
空気側の候補は、吸込口・吹出口の障害、フィルターやコイルの目詰まり、送風機の不調などです。新晃工業の取扱説明書でも、風の有無やフィルター・コイルの状態が確認項目になっています。[2]
確認の際は、まず外から見える障害物と運転設定を記録し、内部の清掃・点検は安全措置を取れる担当者に任せます。風量設定を変えた後は、変更前後を残してください。「弱かった気がする」だけでは、別の担当者が変化を比較できません。
4.風が出る場合は冷水側の情報を集める
冷温水が流れているか、配管途中の弁、コイル内の空気などもメーカーが示す確認対象です。[2]ただし、弁を開ける指令が出ていることと、実際に水が流れていることは別です。
熱源出口と対象FCU入口の温度を比べるときは、時刻・測定箇所・運転状態をそろえます。異なる時刻の値や、配管表面温度と水温を無条件に比較しても、差の原因は特定できません。
系統図と運転記録を添えて、保守担当に通水状態の確認を依頼します。弁の強制開放、エア抜き、ストレーナーの分解は、漏水や他室への影響を伴うため、初動確認の延長で実行しないでください。
温度の数字だけで原因を断定しない
冷水の温度差は、一律5℃ではない
ダイキンのFWMFには、水の出入口温度差5℃・7℃・10℃に対応するコイル仕様が示されています。これは製品の設計条件の例で、全FCUに共通する正常値ではありません。[3]
温度差は水が受け取った熱量と流量の両方に関係します。したがって、「差が大きいから流量不足」「差が小さいから正常」と、温度差だけで結論を出すことはできません。対象機の設計条件と、そのときの負荷・制御状態を合わせて評価します。
吹出温度だけでは、部屋の冷え方を評価できない
吹出温度の記録には、吸込空気の温度と風の状態も添えます。冷たい風でも量が少なければ、部屋全体の熱を十分に処理できないことがあります。また、窓・扉の開放などで負荷が増えると、冷えにくくなる場合があります。[2]
判断の軸は「単独の数値が何℃か」だけでなく、「同じ条件の正常時と何が違うか」です。次の記録表は、その比較のために使います。
点検・引継ぎに使う記録表
| 記録する項目 | 残しておく内容 |
|---|---|
| 対象と時間 | 棟・階・室名、機器番号、発生時刻、確認時刻 |
| 運転条件 | 運転表示、設定温度、風量設定、起動からの経過時間 |
| 空気側 | 室温、吸込・吹出温度、風の状態、確認できた汚れや障害物 |
| 水側 | 冷水入口・出口温度、熱源側表示、確認できた弁・ポンプの状態 |
| 比較条件 | 同一系統の正常機、外気条件、在室人数、扉・窓の状態 |
| 対応 | 実施した操作、変更前後、未確認項目、連絡先と引継ぎ時刻 |
測定できない欄は「未測定」、確認できない欄は「未確認」とします。温度は℃で記録し、測定器と測定位置も残します。推測した値で表を埋めないことが、誤診防止につながります。
ドレンパンの点検は冷房能力の確認と別に管理する
冷え方の確認に加えて、排水受けの衛生管理も必要です。建築物衛生法の対象となる特定建築物では、同法施行規則第3条の18第4号が、空気調和設備内の排水受けについて、使用開始時と使用開始後1月以内ごとに1回の汚れ・閉塞の点検、必要に応じた清掃等を定めています。1月を超えて使用しない期間には例外があります。[5]
事務所衛生基準規則が適用される事務所でも、第9条の2第4号に同様の規定があります。特定建築物に当たらないことだけで、点検義務がないとは判断できません。[6]
この周期を、そのまま「FCUの全部品を月1回法定点検する義務」と読み替えないでください。適用法令を確認し、各部の保守周期はメーカー指示・使用条件・現場の管理計画と分けて整理します。
よくある質問
設定温度を下げ続ければ直りますか?
設定の確認には意味がありますが、風量や通水の問題を設定変更だけで解消できるとは限りません。変更は現場の運用範囲で行い、反応がなければ設定を何度も変えるより、症状と測定条件を記録して引き継ぎます。
冷水の出入口温度差が分かれば、能力を計算できますか?
温度差だけでは計算できません。水側の熱量評価には流量などの条件も必要です。今回は、流量の推定や不十分な測定値からの能力判定は行いません。
どの段階で専門業者に依頼しますか?
危険な兆候があるときは直ちに停止・連絡を優先します。通常設定と安全に確認できる項目で解決しない場合も、内部電気部品、弁の動作、配管内部などの調査へ進む前に依頼します。機器番号と上の記録表を渡すと、依頼内容が明確になります。
まとめ
FCUの冷房不良は、症状の範囲を確認し、設定・制御、空気側、冷水側の順に整理します。温度差だけで原因を決めず、設計条件と正常時の記録を比較してください。初動で重要なのは、危険な操作を避けながら、次の担当者が判断できる情報を残すことです。
参考資料
[1]ダイキン工業「用語集」二次側編・ファンコイルユニット。構成と配管の説明を参照。
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[2]新晃工業「ファンコイルユニット取扱説明書」fcs-24-a.pdf。SF・SFM・SFR・SFRM、SC・SCR・SCRM、SL・SLR・ST・STR、MH・MV、CP・CPM等を掲載。本文p.1–2の安全注意、p.17の異常時確認を参照。他メーカー・特殊仕様への適用は各説明書で確認。
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[3]ダイキン工業「ファンコイルユニット 天井埋込形(FWMF)」低水量・大温度差コイル、電動2方弁比例制御の製品説明を参照。
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[4]三菱重工サーマルシステムズ「長年ご使用のファンコイルユニット(空調機)のお取扱について」。経年劣化と異常時対応を参照。
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[5]厚生労働省掲載「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則」第3条の18第4号。
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[6]厚生労働省掲載「事務所衛生基準規則」第1条、第9条の2第4号。
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資料確認日:2026年10月21日。確認順序・記録表は、参照資料を踏まえた編集上の整理です。個別設備の故障診断結果を示すものではありません。
